『ポアロ登場』雑誌掲載順

――英国週刊誌『The Sketch』掲載順まとめ

アガサ・クリスティの短編集『ポアロ登場』に収録された14編は、
1923年、イギリスの週刊誌『The Sketch』で連載形式で発表された。

以下は、イギリス本国での実際の発行日(Date of Issue)に基づく、最も信頼性の高い掲載順である。
(すべて The Sketch 掲載)


『ポアロ登場』収録作 ― 英国誌『The Sketch』掲載日(発行日)一覧

作品名(日本語/原題/ 初出題名掲載日
(The Sketch 号数)
1 グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件
The Jewel Robbery at the Grand Metropolitan
The Curious Disappearance of the Opalsen Pearls
1923年
3月14日
(第1572号)
2 ミスタ・ダヴンハイムの失踪
The Disappearance of Mr Davenheim
1923年
3月28日
(第1574号)
3 「西洋の星」盗難事件
The Adventure of “The Western Star”
1923年
4月11日
(第1576号)
4 マースドン荘の悲劇
The Tragedy at Marsdon Manor
1923年
4月18日
(第1577号)
5 首相誘拐事件
The Kidnapped Prime Minister
1923年
4月25日
(第1578号)
6 百万ドル債券盗難事件
The Million Dollar Bond Robbery
1923年
5月2日
(第1579号)
7 安アパート事件
The Adventure of the Cheap Flat
1923年
5月9日
(第1580号)
8 狩人荘の怪事件
The Mystery of Hunter’s Lodge
1923年
5月16日
(第1581号)
9 チョコレートの箱
The Chocolate Box
The Clue of the Chocolate Box
1923年
5月23日
(第1582号)
(連載中断:夏季に別企画を挟む)
10 エジプト墳墓の謎
The Adventure of the Egyptian Tomb
1923年
9月26日
(第1600号)
11 ヴェールをかけた女
The Veiled Lady
The Case of the Veiled Lady
1923年
10月3日
(第1601号)
12 イタリア貴族殺害事件
The Adventure of the Italian Nobleman
1923年
10月24日
(第1604号)
13 謎の遺言書
The Case of the Missing Will
1923年
10月31日
(第1605号)
14 消えた廃坑
The Lost Mine
1923年
11月14日
(第1608号)

補足(事実関係)

・全14編は1923年3月〜11月に集中して発表
・すべて英国週刊誌『The Sketch』初出
・1924年3月、短編集 『Poirot Investigates』 として単行本化
・日本のハヤカワ文庫版の収録順は、この掲載順とは一致しない


あとがき

100年前の雑誌連載を追いかけていると、
「○月○日」と書かれた日付が、資料によって1週間ずれていたり、
時には1か月ずれて記録されていることに気づく。

これは誤りというより、当時の出版文化そのものだ。

1920年代のイギリスの週刊誌は、

・表紙に記された日付=発行日
・実際の店頭販売=前日〜当日
・地方配本=さらに数日後

という、かなり大らかな流通をしていた。
記録を残す側も、「正確な秒単位」など気にしていない。

さらに言えば、
アガサ・クリスティ本人ですら、自伝の中で
登場人物の設定や細部をうっかり取り違えている。

そう考えると、
1週間や1号分のズレは、もはや誤差というより
連載という“生もの”の痕跡なのだろう。

1923年のロンドンでは、
人々が駅の売店で『The Sketch』を手に取り、
その週のポアロを楽しんでいた。

その時間の流れに身を委ねるなら、
この「掲載順」で読み直す『ポアロ登場』は、
単なる短編集ではなく、連載小説としての顔を見せてくれる。

――100年後の私たちが、その続きを読んでいる。
それ自体が、ちょっとしたミステリーなのかもしれない。



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