ポワロ映像作品 個人的感想日記(中途経過版)②
観たものから順に記録している途中経過。
ここまで来ると、脚本家によって作品の方向性がはっきり分かれていると断言できる。
安心して観られる脚本家
ジョニー・ウェーバリーの誘拐
これは特に面白かった。
原作の構造を崩さず、テンポも良い。
余計な湿度を足さず、事件そのものの面白さをそのまま映像にしている。
コックを探せ
軽妙で無駄がない。
原作のユーモアとテンポがきちんと生きている。
この二作はいずれも脚本はクライブ・エクストン。
初期ポワロを支えた功労者と言われるのも納得する。
原作の骨格と倫理を崩さない姿勢が一貫している。
違和感が続く脚本家
青列車の秘密(脚本: ガイ・アンドリュース)
イマイチだった。
原作はかなり前に読んでいるが、短編集の関連作は最近読んだばかりだ。
観始めてから直ぐに思った。
「こんなんだっけ?」
メインプロットは追っている。
だが肉付けが余計に感じる。
- 人物関係の過度なドラマ化
- 心理描写の増量
- 事件のロジックより感情を優先
原作の持つ構造の強さよりも、人間関係の湿度が前面に出てしまっている。
オリエント急行の殺人(脚本: スチュワート・ハーコート)
評価が真っ二つに分かれる回と言われるのも分かる。
違和感の大きな理由は、宗教観の押し出しだ。
- ポワロがロザリオを持って苦悩する
- 冒頭で軍人の自殺を目撃する
- 全体を覆う重苦しいトーン
原作の問いは「正義とは何か」だ。
だがドラマ版は、それを宗教的・精神的な苦悩へと強く傾けている。
その結果、ポワロの知的な鮮やかさが薄れてしまった。
この事件の醍醐味は、
十二人の乗客それぞれの証言を積み上げ、
アリバイを崩し、
パズルのピースがカチッとはまる瞬間にある。
だが今回は、その「知的なパズル」の快感よりも、
ポワロの精神的苦痛の演出が優先されている。
原作ファンとしては言いたくなる。
余計な心理描写をする暇があったら、
一人一人の証言の矛盾をもっと丁寧に描いてほしい。
そして『死との約束』(脚本: ガイ・アンドリュース)
正直に言えば、「最悪」と言いたくなる。
これもガイ・アンドリュース脚本。
もはや別物すぎる設定
原作は、エルサレム周辺の灼熱の太陽の下、
独裁的な老婦人と、その支配下に置かれた家族の心理戦が核心だ。
「誰が彼女を殺してもおかしくない」という極限状態。
そこが最高に面白い。
なのにドラマ版は、砂漠の発掘現場へ舞台変更。
修道女や新キャラクターを投入。
あの重厚な家族ドラマはどこへ行ったのか。
動機と犯人の改変
ここが最大の怒りポイント。
原作の犯人と動機をいじり、
よりショッキングでドロドロした展開に変更。
まさにメロドラマ化。
『青列車の秘密』と同じ傾向。
原作の倫理を塗り替えてしまう。
原作こそが至高
原作の面白さは、
「24時間以内に解決してみせる」と宣言するポワロの格好良さ。
そして、閉鎖的な家族関係の緊張感。
その魅力がほとんど活かされていないのは、本当に残念だ。
結論として
ガイ・アンドリュース脚本回は、
原作の再現ではなく強い再解釈作品だ。
原作ファンとしては、
もはや二次創作と思って観るしかない。
問題は改変そのものではない。
物語の倫理と骨格を動かすことだ。
ここまで観て、傾向は完全に見えた。

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