『愛の探偵たち 』(ポアロ・マープル・クィン)雑誌掲載順

『愛の探偵たち』収録作品 年表

作品名(日本語/原題) 掲載日
(掲載誌)
1 ジョニー・ウェイバリーの冒険
The Adventure of Johnnie Waverly/ポアロ
1923年10月10日
(The Sketch)
2 愛の探偵たち
The Love Detectives/クィン
1926年11月15日
(The Story-Teller)
3 四階のフラット
The Third Floor Flat/ポアロ
1929年1月5日
(Detective Story Magazine)
4 奇妙な冗談
Strange Jest/マープル
1941年10月24日
(Strand Magazine11月号)
5 昔ながらの殺人事件
Tape-Measure Murder/マープル
1941年11月25日
(Strand Magazine12月号)
6 管理人事件
The Case of the Caretaker/マープル
1941年11月25日
(Strand Magazine12月号)
7 申し分のないメイド
The Case of the Perfect Maid/マープル
1942年3月25日
(Strand Magazine4月号)
8 三匹の盲目のねずみ
Three Blind Mice
1947年5月30日
(BBCラジオ Light Programme)

「ジョニー・ウェイバリーの冒険」の誘拐トリック

この作品は1923年の極めて初期のポアロものです。この頃のクリスティは、当時のアメリカで流行していた「誘拐事件」というテーマをイギリスの屋敷に持ち込む実験をしていました。

後年の傑作『オリエント急行の殺人』へと繋がる「誘拐と心理」への関心が、すでにこの短編で芽生えているのが分かります。

「愛の探偵たち」

1926年に雑誌に掲載された際のタイトルは『十字路にて(At the Crossroads)』でした。後に「愛の探偵たち」に改題されましたが、クィン氏が常に「境界線」や「十字路」といった象徴的な場所に現れるという彼の神秘性を表したタイトルでした。

「四階のフラット」

ポアロの住まいである「ホワイトヘイブン・マンション」のモデルとされるのは、ロンドンに実在するアパート「アイソコン・ビル(Florin Court)」など諸説ありますが、同じ建物内の別の階で事件が起きるという設定は、クリスティ自身のアパート暮らしの経験が反映されていると言われています。

実は「ミス・マープル」のプロトタイプ集

この収録作には「奇妙な冗談」「管理人事件」「申し分のないメイド」など、ミス・マープルの短編が多く含まれています。

これらのマープルものは、1940年代の戦時中に書かれました。クリスティは空襲の下で、自分の故郷のような静かな村(セント・メアリ・ミード)を舞台にした物語を書くことで、心の平穏を保っていたと言われています。

「三匹の盲目のねずみ」はイギリスでは書籍化されていない

この短編は、もともとメアリー王妃への80歳の誕生日プレゼントとして依頼されたラジオドラマ用の脚本でした。

詳しくはこちら: 『三匹の盲目のねずみ』の歴史

おわりに

歴史や日付のズレは、それだけ多くの国で、多くの雑誌が「クリスティの新作を載せたい!」と争奪戦を繰り広げた証拠でもあります。

『愛の探偵たち』は、単なる短編集というよりも、「当時の読者がアクセスできた/できなかったテキストの差」や、「雑誌メディアと劇場興行の力関係」まで含めて味わえる、一種の出版史的資料でもあります。



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