警察学校で起きていたこと 第3話

「命令」という言葉が、歪んだ瞬間


ある日、担任教官から呼ばれた。

そして、
思いもよらない指示を受けた。

「親に会いに行け。
仕事について話してこい」

私は、言葉を失った。


担任教官は、
私の家庭環境を知っている。

父が単身赴任だったこと。
母との関係が破綻していること。
父以外とは、事実上、絶縁していること。

それでも、
この指示は出された。


当時は、
ただただ困惑した。

なぜ、
親が関係あるのか。

私はもう、
二十歳の社会人だ。

警察官としての職務と、
家庭の人間関係に、
どんな関係があるのか。

理解できなかった。


私は、
行った“フリ”をした。

家に着いたフリをして、
指示通り、担任教官に電話をした。

しかし、
すぐに嘘だと見抜かれた。

そして、
こう言われた。

「家に行くまで、
警察学校に戻ってくるな」


私は、戻った。

指示には従わず、
みんなと同じ生活を続けた。

翌日だったか、
数日後だったか。

呼び出され、
こう言われた。

「お前、何で戻ってきた?」

この言葉は、
今もはっきり覚えている。


警察官には、
いわゆる「服務規律」がある。

その中には、
「職務上の上司の命令に従うこと」
という内容がある。

でも、
今も思う。

親に会いに行くことは、
職務なのだろうか。




警察官であっても、
人には私生活がある。

家庭の事情は、
職務の外にある。

それを、
「命令」という言葉で包み、
従わせようとすることに、
私は強い違和感を覚えた。




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