第1話
可愛がられる側だった私が、目をつけられるまで警察学校での生活は、
私にとって決して苦しいものではなかった。
上下関係の厳しい寮生活、
運動部での経験、
目上の人への距離感。
それらはすべて、
それまでの人生で自然と身につけてきたものだった。
私は、
ただ「いつも通り」に振る舞っていただけだ。
結果として、
先輩や教官たちに、
とても可愛がってもらった。
家庭環境のことを知っている限られた教官からは、
より強く気にかけてもらった。
「よく、そんな家庭環境で
一度も道を外さず、警察官になったな」
その言葉は、
評価であり、労いだった。
さらに、
組織のトップクラスにいる教官の一人が、
私を特に気に入ってくれていた。
息子さんと私が同い年で、
しかも同じ学校に関係があった。
偶然が重なり、
私は“目に留まる存在”になっていた。
今振り返ると、
それがすべての始まりだったのだと思う。
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