『マン島の黄金 』(ポアロ・クィン)雑誌掲載順

『マン島の黄金』収録作品 年表

作品名(日本語/原題) 掲載日
(掲載誌)
1 名演技
The Actress
1923年4月1日
(The Novel Magazine5月号)
2 クリスマスの冒険
Christmas Adventure /ポアロ
1923年12月12日
(The Sketch)
3 光が消えぬかぎり
While the Light Lasts
1924年3月1日
(The Novel Magazine4月号)
4 壁の中
Within a Wall
1925年9月22日
(Royal Magazine10月号)
5 白木蓮の花
Magnolia Blossom
1926年2月22日/Issue 329
(The Royal Magazine3月号)
6 孤独な神さま
The Lonely God
1926年6月22日
(Royal Magazine7月号)
7 夢の家
The House of Dreams
1926年12月12日
(The Sovereign Magazine1月号)
8 崖っぷち
The Edge
1927年1月1日
(Pearson’s Magazine2月号)
9 愛犬の死
The Death of a Dog
1929年9月1日/Issue 295
(The Grand Magazine9月号)
10 マン島の黄金
Manx Gold
1930年5月23–28日
(Daily Dispatch/連載)
11 バグダッドの大櫃の謎
The Mystery of the Baghdad Chest/ポアロ
1931年12月24日
(The Strand Magazine32年1月号)
12 クィン氏のティー・セット
The Harlequin Tea Set/クィン
1971年11月中旬
(Winter’s Crimes 3)
※Macmillan刊 年刊アンソロジー
※『アンソロジー』=複数の異なる作家の作品を集めて1冊にした本
『Winter’s Crimes 3』は、毎年冬に出版されていたシリーズの第3巻目で、他の有名作家(例えば、エラリー・クイーンやディック・フランシスなど)の短編が一緒に収録されています。





クリスマスの冒険

ポアロものの名作「クリスマス・プディングの冒険」原型となった短編です。

初期版は非常にシンプルな構成で、のちに肉付けされて現在知られる形になりました。 アイデアの「試作段階」を確認できる資料的価値の高い作品です。

光が消えぬかぎり

1924年発表の非常に初期の短編で、ミステリ要素はほとんどありません。 恋愛と選択を描いた作品です。

この物語の発想は、のちにメアリ・ウェストマコット名義の恋愛長編 『愛の旋律(Giant’s Bread)』へと受け継がれました。

クリスティが「ミステリ作家以外の道」を模索し始めた痕跡が見える、 橋渡し的な一篇です。

マン島の黄金

この作品は、1930年にマン島の観光促進イベントとして書かれた、きわめて珍しい例です。 小説の体裁をとりつつ、実際には「宝探しゲーム」のヒント集でもありました。

  • 新聞連載と観光パンフレットを兼ねた企画
  • 島内4か所に隠された嗅ぎタバコ入れを見つけると賞金100ポンド
  • 観光客向け施策のため、マン島住民は参加不可

純粋な文学作品というより、実在したイベントの一部として読むと性格が分かりやすい短編です。


バグダッドの大櫃の謎

後に有名作「スペイン櫃の秘密」として書き直される、 ポアロ物の原型版にあたる短編です。

基本的な事件構造は同じで、のちに分量と構成を整理し直して再利用されています。 クリスティが自作アイデアを再加工する典型的な例です。



クィン氏のティー・セット

ハーリ・クィン氏が登場する短編の中でも、他の初期短編とは異なり、クリスティが晩年(1950年代頃)に執筆したと考えられています。

イギリスでの初出は雑誌ではなく、1971年にマクミラン社から発行された犯罪小説アンソロジー『Winter’s Crimes 3』でした。雑誌掲載を飛ばして、アンソロジー本が「初出」となった珍しいケースです。

シリーズを締めくくるような静かな余韻があります。 クリスティ没後の1997年になって、ようやく短編集で広く読める形になりました。



そのほかの作品(簡単メモ)

  • 壁の中:怪異か心理か判然としない不安を描く
  • 白木蓮の花:初期の恋愛短編
  • 孤独な神さま:人間の善意と運命を描く寓話的作品
  • 夢の家:幻想色の強い短編。事件性は薄い
  • 崖っぷち:探偵不在の心理サスペンス
  • 愛犬の死:ミステリではなく、喪失を描いた私的な物語

これらの短編は、後年の代表作の「種」や、 クリスティの作家としての分岐点をそのまま残した記録と言えます。






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