2003年12月発売、加島祥造編集のハヤカワ文庫版アガサ・クリスティ作品「もの言えぬ証人」を、購入した。
私は現在、アガサ・クリスティ作品を発行順に読み進めている途中だ。きっかけは『名探偵コナン』の影響で読んだ『そして誰もいなくなった』と『ABC殺人事件』。この二作があまりにも面白く、そこから発行順でじっくり読んでいこうと決めた。
読み進める中で、まず違和感を覚えたのが、ポアロとヘイスティングスの口調だった。これまで読んできた作品と比べて、二人の話し方や言い回しが明らかに違う。特にヘイスティングスの語りは、今までのイメージとは合わず、人物像が途切れたように感じられた。
翻訳の問題なのか、編集方針なのかは分からないが、シリーズ物において登場人物の口調が安定しないのは、読書体験としてかなりのストレスになる。物語以前に、「このポアロは自分の知っているポアロなのか?」という疑問が終始頭を離れなかった。
そして、読み終えたあとに読んだあとがきで、決定的な出来事が起きた。そこには、これから読む予定だった別のアガサ・クリスティ作品について、犯人がはっきりと書かれていた。ネタバレに関する注意書きは一切なかった。これまで読んだクリスティ作品のあとがきでは、同一作品の犯人に触れる場合ですら、「未読の方は後で読んでください」といった優しい配慮が必ずあった。他作品については、読者の楽しみを奪うような核心的なネタバレは避けられていた。だからこそ、このあとがきは衝撃だった。
読んだ瞬間に忘れようとし、巻末に並んでいるアガサ・クリスティ作品の題名を一気に眺めて、どの作品だったのか特定できないように頭を上書きした。
私は、作品を読み終えたあと、**デビッド・スーシェ版のポアロ映像作品(Blu-ray)**や、ジョーン・ヒクソン出演の『ミス・マープル[完全版]』DVDで、該当する映像作品があれば必ず観るようにしている。原作と映像を行き来しながら楽しむのが、今の自分の読書スタイルだ。その分、物語の核心や犯人の扱いには敏感になっている。
クリスティ作品において、犯人のネタバレは致命的だ。加えて、翻訳によって主要人物の口調や性格が揺れることも、シリーズを読む上では大きな損失になる。
今の技術であれば、AIを用いて翻訳文の口調や人物の話し方を統一し、シリーズとして整え直すことも十分に可能だと思う。あとがきも、翻訳も、作品を大切に読んでいる読者ほど傷つく形になってしまっているのが残念でならない。


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